私たちのナラティブ
受診拒否の乳癌末期患者さんと家族を支えた訪問看護
発達障害と予想される50代女性が乳癌になり、80代の母が通院や抗がん剤治療に付き添っていました。しかし、通院拒否となり医師からは乳癌の自壊創(癌が皮膚から飛び出し潰瘍を作る事)のガーゼ交換だけでも行なうように言われていました。
ある日、自壊創から大量出血し、母が驚いて救急車を呼び搬送となりました。自壊創は傷口が深く、悪臭を放つほどでした。医師は入院を勧めましたが、本人は怖がってしまい強く拒否。母から話を聞くと「自壊創を見るのが怖くて、受診できなくなってから4ヶ月間、一度もガーゼを変えていなかった」ということが分かりました。
私達は病院から連絡を受け、急遽自宅へ訪問しました。自宅は悪性腫瘍が放つ強烈なにおいが充満し、物が溢れているため足の踏み場がなく、本人は台所前の床で寝ていました。
何とか今の環境を変えなければ辛い最期を迎えるであろうと考え、その日から毎日訪問することにしました。はじめは看護師に強い拒否を示し、近所中に聞こえるように「助けてー殺される!」と怒鳴ったり、叩いたり、叫び声を上げて処置することもままならない状況でした。私たちは根気強く患者さんの気持ちに傾聴し、寄り添う看護を行いました。そうすると徐々に自分の気持ちを話してくれて、母親にも甘えられるようになりました。私たちは10ヶ月間毎日欠かさず訪問し、処置をしながら痛みのコントロールに努めました。穏やかに過ごせる環境を少しずつ作り、切り絵や塗り絵を楽しむこともできました。
しかし、死への恐怖心は常にあり、最期は入院すると自分で決めるまでゆっくり話を聞きました。最期は怖くないように入院し、ご家族に見守られながら息を引き取られました。
毎日訪問したこと最期の時まで本人の想いを共有し、私たちや母に甘えながら旅経つことができたのは訪問看護ならではのかけがえのない経験だと思います。
今後も、利用者・家族に寄り添う看護の提供に努めていきたいです。