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私たちのナラティブ

心に残った在宅看取り

緑が丘
患者様とご家族のために

悪性リンパ腫で在宅療養中のI氏(70代)は食べることが好きで、奥さんの運転で買い物に行く事と、自慢の庭に腰掛け庭木を眺めるのが日課でした。
病院での治療が終わり、退院後数カ月した頃、悪性リンパ腫が再発し余命1ヶ月と宣告されました。
訪問すると「いいのが撮れた。」と自分の遺影の写真を見せてくれました。
「本当は元の生活に戻っているはずだった。」「庭の梅や桜が見たかった。」「親父の亡くなった年齢まで自分も生きたい。」等の言葉が聞かれました。
諦め、覚悟、ささやかな希望の言葉でした。I氏を支える妻には介護指導をしながら傾聴の時間を多く持ちました。
その都度状況を説明し、対応方法を伝えました。苦痛を早期に緩和する為、往診医と頻繁に連絡を取る等、医療措置だけではない、傾聴、日々のアセスメントや多職種とのマネジメントが看護師の大きな役割だと思います。

私たち訪問看護師ができること

在宅での看取りで私達に出来る事は、ご家族の不安な気持ちに寄り添い、変化のプロセス、最後の兆候についてお伝えし、心の準備が出来るように支えていく事だと考えています。
最期の時間を大切に過ごして欲しいと願っています。妻には「特別な事は何もありません。痛む部分を摩ってあげて下さい。耳は聴こえています。想い出話をしてもいい、そんな時間を持ってもらいたい。」とお伝えしました。

訪問看護のやりがい

最期の時の2時間前、昏睡状態となる前にご本人が「メロンが食べたい。カットのじゃなくて丸ごとだ。」と訴えられました。ご家族は大急ぎでメロンを買いに走り、それを満足そうに口にしたそうです。I氏らしいエピソードだと思います。
「私は幸せだったんだなぁ。」家族に囲まれて誕生日写真を眺めて、そう言ったI氏。
満足いく写真を撮り、自慢の庭を眺め、食べたいものを食べ、ご家族と一緒に誕生日を迎え、大好きな往診医に看取られて旅立たれました。
ステキだなぁと思います。
訪問看護はご家族の大切な時間に関わらせていただく場面が多く、やりがいを感じています。

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