私たちのナラティブ
尊厳を支える看護とは
がんが進行し、ほとんど意識が無くなっていたAさんは、生前とても入浴が好きな方でした。
もう湯船に入ることは難しくなってしまいましたが、床上での清拭や髭剃りを通して、少しでもAさんらしさを大切にしたいと考えました。
そのとき、そばにいた息子さんは「どのように触れてよいのか」と戸惑いを感じていました。
そんな息子さんに、Aさんがいつも使っていた電動髭剃りを手渡し、
「よかったら、これでお父さんの髭を整えてあげませんか」とお声がけしました。
息子さんはゆっくりと、慣れない手つきで髭を剃りながら、静かにAさんと向き合う時間を過ごしました。
それは、言葉では表せないほど温かく、家族にとってかけがえのない“最後の大切な思い出”となりました。
医療ケアだけではなく、家族がその人らしさに触れ、心を通わせる時間をつくること。
それは、尊厳を支える大切な看護の力なのだと思っています。
訪問看護師としてその大切な役割を忘れず今後も働いていきたいと思います。